2016/10/17

3月のライオン

 小説でもマンガでも、あまりに引き込まれると数日眠れなくなるということがある。読み続けて徹夜してしまうのではなく、読み終えた後に登場人物の持っているであろう感情やら何やらがぐるぐると頭の中で回り続けて整理が付かないのだ。

 というわけで、久しぶりに寝不足に陥らせた「3月のライオン」である。タイトルからは連想できないが将棋マンガである。「あぁ、ちょっとマイナーなジャンルを取り上げて、トリビアや小ネタ散らしながらの青春マンガね」などとナメているとエラい目に遭う。

 もう人物の描きこみが巧みすぎる。(注:絵や設定の細かさの話ではない) 人物の描写はむしろ説明不足なほどだ。説明不足だから、なぜそういう行動をとるのか判らない。物語の進行に合わせて人物はどんどん描きこまれる。次第に深みを増す人物像。紙の上でその人物の設定を作って動かしているのではない。まるで木材から人物を彫り出していくかのような描き方だ。
 そしてそれで見えてくるのは、能天気な無敵の主人公ではなく、それぞれに問題を抱え苦悩し、それでも前に進む者、立ち止まる者、その人間臭い喜怒哀楽である。凄い!何モンだ、この作者!?

 しかしまー、恐ろしいな。ここまで緻密に物語を組めるもんかな?どこまでが計算なんだろう。これに比べたら、その辺の少年漫画の主人公なんかペラッペラの驚きの薄さだな。いや恐ろしい。

NHKでアニメが始まったらしいが、とりあえずコミックスをお勧めする。

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