2017/08/04

極黒のブリュンヒルデ

極黒のブリュンヒルデ 全18巻:岡本倫

 読んだ。そこそこ面白いし、最後まで読めるけど、ストーリー中盤から疑問符がいっぱい付く。率直な感想を述べれば「シリアスは向いてないみたいだから、素直に学園ラブコメでも描いてたほうが良いのでは…?」となる。

 ストーリーはWikipediaのあらすじを参照のこと。
極黒のブリュンヒルデ - Wikipedia

 さて、良い点を上げておこう。まず絵柄は良い。画力もある。少なくとも、進撃の巨人のように、描きたい事に画力が追いついていない、というようなことは無い。
 コメディ部分は結構面白い。本当にこの部分で描けば良いのに、と思う。

 さて、ダメな点だ。
まず、全体的にどこかで見たようなプロットが多い。「エヴァ」や「まどマギ」の影響は見て取れるし、他にもあるかも知れない。
 他作品からの着想が悪いとは言わない。オリジナリティは大事だが、それだけで全てを構築する必要は無いと思う。他作品の要素を持ってきて、大鍋に放り込んだとしても、自分なりの味付けや切り口、料理の仕方が出来れば良いのだ。
 ただ残念ながら、そこまでに至っていないだけである。

 シリアス路線で世界征服とか人類滅亡とかいう大風呂敷を広げてしまうのは、まぁ許そう。であれは、悪の組織が世界征服や人類滅亡を企むに足るまっとうな理由が必要である。
 このあたりの悪の秘密結社のジレンマについては以下の本が詳しい。さすがオタキングである。
 簡単に説明すると、何かまっとうな理由があって世界征服を狙うとして、その目的を達成するためにはもっと他の効率的かつ簡単な方法があり、目的に対する手段としての世界征服は労多くして効率の悪いやり方である、という話である。大風呂敷を広げる前にぜひ一読をお勧めする。
世界征服は可能か? 岡田斗司夫 ちくまプリマー新書 - 筑摩書房

 で、人類を滅ぼさねばならない一応の理由は付けてあるが、いかにも薄い。ナニソレ状態である。百歩譲って、その理由でも無理やり納得するとしよう。ではその実現の手段として、なんか目的と手段がズレてませんか?
 そこまでの技術力、資金力があるなら、そんな問題の多いやり方じゃなくて、もっと効率的に出来るんじゃないの?
 例えると、世界征服のために改造人間を作っておきながら、なぜか幼稚園バスをハイジャックするが如し、である。

 よく考えずに設定や伏線をばら撒いたが回収することに必死で、全体的に大きくバランスを欠いている。なおかつ回収し切れてないし、辻褄も合っていない。要するに、話をまとめる力量が足りなかったとしか言いようが無い。やはり10巻ぐらいで見切りを付けておくべきだったのだ。

 結局のところ、作者がグロを描きたいだけ、という気がしてならない。「エルフィンリート」でメジャーになったものだから、編集担当が切る決断ができずズルズルと連載が続き、何ともまとまりのない話になってしまいました、というところだろう。