2018/05/18

BEASTERS ビースターズ

BEASTERS ビースターズ 板垣巴留

 評価に困る漫画だ。いったい何なんだ、コレは?

 まず、画力は素晴らしい。肉体を立体物として、二次元上で再構成できる確かなデッサン力。素性の良さを感じます。

 でだ!この画力で描くのがケモノですか!?(爆笑)
 いや、ポーズをとった扉絵とかホントいい! でもケモノ!

 風刺画とかで動物を使うってのは鳥獣戯画以来の伝統あるやり方だし、名作と評価されるものも多い。しかしこれでリアルな世界設定を持ち込んで青春漫画をやろうってどういうことよ。無茶だろ。
 肉食獣と草食獣の共存する世界。表面上は平和共存という綺麗事がまかり通りながらも、肉食獣側の本能や欲望が渦巻き、草食獣側の恐れや反発。 うーむむ、現実を無視した綺麗事がまかりとおる事の無理さ、陳腐さというのは現代社会の風刺と言えるかもなぁ。

 その無理のある社会の中で、ハイイロオオカミの青年である主人公が悲しみ、悩み、怒る物語だな。この主人公レゴシ君のなんとも高校生男子っぽい単純さ、純粋さが愛おしくさえ思える。 周囲のキャラクタも丁寧に描写される。読むうちにヒロインの一人であるジュノちゃんなんか可愛く見えてくる。ケモノだけど(笑)

 ストーリー展開がかなりブッ飛んでいるのだが、もともとの世界観がブッ飛んでいるので、「そんなもんなのか?」と納得せざるを得ない。十分に面白く先が気になる読ませる漫画だが、いったいどこへ行こうとしているのかと、作者の将来が心配になる漫画でもある。

 漫画が日本文化を代表する一大ジャンルであるのは違いない。名作、傑作も数多いが駄作や凡作は無数にある。まさに「高い山ほど裾野が広い」のである。その広大な漫画業界でも異彩を放つ本作。名作になるかどうかは判らんけど、唯一無二!!